ステロイドのリスクを知っておこう

アトピー性皮膚炎の治療薬として広く使われているのが、ステロイドです。
ステロイドには、塗り薬のほかに飲み薬や注射によるものとがありますが、子供のアトピー性皮膚炎には主に塗り薬であるステロイド外用薬が使われます。

ステロイド外用薬は、皮膚炎の炎症を抑える効果やアレルギー反応を抑える効果は非常に優れていますが、使い方によってはリスクがあることも知っておきましょう。


ステロイドとは?

ステロイドとは、副腎という臓器から作られる副腎皮質ホルモンのひとつです。
ステロイドホルモンには、体の免疫力を抑制したり、炎症を鎮めたりする作用があるため、1950年代からさまざまな疾患の治療に使われるようになりました。

子供のアトピー性皮膚炎の治療にもステロイド外用薬は重要な役割を果たしており、適切な使用により劇的な改善が見られます。
しかし、薬効が強すぎるものや、長期間に渡る使用により、副作用やリバウンドが起こることも知られています。

また、ステロイドには免疫を抑制する作用があるため、皮膚に何らかの細菌やウィルスが感染している場合の使用には特に注意が必要です。
細菌やウィルスが感染しているときにステロイド外用剤を塗ると、免疫機能が低下し、細菌やウィルスが一気に増殖することがあるからです。

特に、水ぼうそう、手足口病、とびひなどに感染している場合は、ステロイドは中断する必要があります。

ステロイド外用剤の副作用とは?

ステロイド外用剤の副作用としては、次のようなものが知られています。

  • 皮膚が薄くなる
    強めのステロイド外用剤を長期間に渡って使用した場合、皮膚を構成している膠原線維が減少してくるため、皮膚が萎縮して薄くなります。
    痛みやかゆみはありませんが、表面にちりめん状の細かいシワがよったり、静脈が透けて見えることがあります。
    さらに皮膚萎縮が進行すると、刺激に弱くなり傷つきやすくなります。しかし、ステロイド外用剤の使用を止めると、徐々に回復してきます。
  • 感染症にかかりやすくなる
    ステロイドには、免疫力を低下させる作用があるため、細菌やウィルスに感染しやすくなります。
    良く見られるのは、ニキビや毛嚢炎などの細菌感染症です。
    また、強いステロイドを使用している場合、風邪やインフルエンザ、水ぼうそう、手足口病、とびひなどの感染症にもかかりやすくなるので、注意が必要です。
  • 顔の皮膚が赤くなる
    顔に長期間ステロイド外用剤を使用している場合、毛細血管が拡張して浮いてくるため、顔の皮膚が赤くなり「赤ら顔」になることがあります。
    ステロイドには、もともと毛細血管の拡張を抑える働きがありますが、必要以上に使用し続けると血管収縮作用が働かなくなり、毛細血管が拡張したままになってしまうために起こる症状です。
    これを「ステロイド潮紅」と言っていますが、ステロイド外用薬を中止することにより皮膚の赤みは消えてきます。しかし、場合によっては元に戻るまでに1年以上かかることもあります。
  • 多毛・毛深くなる
    腕や脚など、ステロイド外用薬を塗っている部分の毛が濃くなることがあります。
    ステロイドには、毛包皮脂腺を活性化させるという男性ホルモンに近い作用があるため、男性ホルモンの分泌が少ない子どもや女性に現れやすい副作用です。
    ステロイド外用薬の使用を止めることにより、元に戻ります。
  • しゅさ様皮膚炎
    ステロイド外用薬による副作用の中でも、重大な症状とも言えるのが「しゅさ様皮膚炎」です。
    顔面に強いステロイド外用薬を塗り続けることにより発症するもので、頬やおでこ、口のまわりなどが赤くなり、次第に毛細血管が拡張して血管が浮き出てきます。
    さらに丘疹(きゅうしん)や膿疱(のうほう)が現れ、強いほてりや灼熱感を伴います。
    この場合、すぐにステロイド外用薬の使用を止めなければなりませんが、止めた後、一時的に症状がひどくなることがあるので、専門の医師に相談しながら治療を進める必要があります。

ステロイドのリバウンドとは?

ステロイドの使用を急に中止した場合、今までよりも皮膚炎の症状が悪化することがあります。
これを「リバウンド」と言っていますが、強いステロイドを長期間に渡って使い続けるほど、リバウンドの症状も強くなります。

また、皮膚炎の症状悪化に伴い、筋肉痛や関節痛、発熱、食欲不振、低血圧、倦怠感、体重減少などの症状も見られることがあります。

ステロイド(副腎皮質ホルモン)は、もともと体内の副腎によって生成されるものですが、外部から強力なステロイドが与えられ続けると、副腎が自ら作り出す力が弱くなります。
そのような状態のときにステロイドを止めると、炎症を抑えるものが何もなくなり、一気に皮膚炎の症状が悪化すると考えられています。

リバウンドを避けるためには、少しずつステロイドの量を変えたり、弱いものに変えて行くなどのコントロールが必要です。

ステロイドは、適切な使用が大切

アトピー性皮膚炎の苦しみから子どもを救いたいと思った時、ステロイド外用剤はとても頼りになる薬です。
現在のところ、皮膚の炎症とアレルギー反応を速やかに鎮めてくれる薬は、ステロイド以外に見当たらないからです。

しかし、必要以上に大量に、長期的に使用することにより、副作用のリスクがあることは知っておいてください。
医師の指導のもとに、適切な使用をすればさほど神経質になる必要はありません。

ステロイド外用剤の助けを借りて症状が治まっている間に、食事の内容や生活環境を見直したり、体力や免疫力をつけるなどして、アトピー性皮膚炎を克服して行くようにしましょう。



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